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不動産購入で節税方法は何がある?控除や減価償却の手順も紹介

不動産取引について

川鍋 錠二

筆者 川鍋 錠二

不動産キャリア30年

不動産業界歴30年の豊富な知識と経験を活かし、お客様にとって最良の選択ができるよう、サポートします。長年の実績をもとに、具体的で信頼できるアドバイスを提供いたします。


こんにちは、いえプロ不動産です。


不動産を購入する際、「どのように節税できるのか」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。不動産の取得や保有、そして売却のタイミングによって、利用できる税制優遇や控除の仕組みが大きく変わるため、制度を理解しないまま進めてしまうと想定外の税負担が発生することもあります。


本記事では、住宅ローン控除や減価償却、取得税・譲渡益に関わる税制優遇など、知っておきたい節税方法を分かりやすく解説します。不動産購入を検討している方の疑問や不安の解消に役立つ内容となっておりますので、ぜひ参考にしてください。




住宅ローン控除を活用した節税


住宅ローン控除は、住宅の購入や新築に伴って利用できる所得税および住民税の控除制度です。所得税からの控除率は年末ローン残高の0.7%となっており、控除期間や借入限度額は住宅の性能や世帯の状況によって変わります。


とくに長期優良住宅や低炭素住宅など認定住宅では、借入限度額が高く設定されており、2025年入居の場合、新築の長期優良住宅では借入限度額は4,500万円、控除期間は13年間、最大控除額はおおよそ409万5,000円となります。一方、子育て・若者夫婦世帯では同じ住宅で借入限度額が5,000万円、最大控除額は455万円となります。なお、ZEH水準、省エネ住宅なども性能に応じて控除額が異なります。



控除を最大限活用するにあたって押さえるべきポイントは以下の点です:

ポイント注意点
住宅の性能長期優良住宅や省エネ性能の高い住宅ほど控除額が大きくなる(例えば長期優良住宅は控除対象限度額が高め)
借入額との関係借入金額によっては控除枠が足りず実際の節税額が限られる場合があるため、適切な借入規模を検討する必要があります
入居時期と世帯条件入居が2025年の場合、子育てまたは若者夫婦世帯では優遇措置が適用されるため、該当する世帯は特に恩恵が大きくなります


以上の点を押さえておくことで、ご自身に合った住宅ローン控除の活用が可能になります。


減価償却を利用した所得圧縮の手法


減価償却費とは、建物や建物付属設備などを、法定耐用年数に応じて経費として分割計上する制度です。土地は経年劣化しないため対象外であり、建物と設備の費用を複数年にわたって経費化できます。この仕組みにより、会計上の利益を減らし、結果として所得税と住民税の負担を軽くすることが可能です。また、不動産所得が赤字になった場合でも、給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することで課税対象となる所得を圧縮でき、効果的な節税につながります。


項目内容メリット
築古木造住宅法定耐用年数が短いため減価償却費を早く多く計上可能短期間で大きな所得圧縮が可能
中古RC造マンション簡便法で耐用年数を補正し、償却期間を延長する扱い長期間にわたり安定した減価償却が期待できる
建物と設備を分離設備は耐用年数が短く、早期に償却可能初年度など早期に節税効果を高められる


例えば、築古の木造住宅の場合、法定耐用年数が短いため年間に計上できる減価償却費が大きく、会計上の赤字も大きくなる傾向があります。中古の鉄筋コンクリート(RC)造マンションでは、簡便法により耐用年数を延ばして扱うことができるため、結果として長期にわたって減価償却費の計上が可能となり、安定した節税効果を得られます。さらに、建物と設備を分けて減価償却することで、特に設備部分を短期で償却でき、購入初年度などに節税効率を高める手もあります。


ただし、減価償却による節税には注意点もあります。まず、減価償却によって赤字に見えても、金融機関が融資時に重視するのはキャッシュの収支や、減価償却前の実質的な利益です。そのため、帳簿で赤字でも融資審査が不利になりにくいという特徴があります。しかし、売却時には帳簿上の簿価が減価償却によって低くなるため、売却価格との差額が譲渡所得として課税対象になり、結果的に税負担が増加する可能性がある点も押さえておかねばなりません。


取得時・売却時における税制優遇制度の活用


不動産の取得や売却の際には、さまざまな税制優遇制度を活用することで、税負担を軽減することが可能です。ここでは、取得時の取得税・登録免許税・固定資産税の軽減措置と、売却時に使える譲渡所得の特別控除について、最新の制度をわかりやすく整理してご説明いたします。


まず、取得時には認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の取得によって、次のような軽減措置が受けられます。固定資産税は一般住宅に比べて減免期間が延長され、登録免許税では税率が最大0.2%ポイント軽減、不動産取得税では課税標準から最大100万円の控除が受けられます(認定長期優良住宅の場合)。また、不動産取得税の軽減措置は令和7年(2027年)まで延長され、取得直後に申告を行うことで節税が可能です。



表:取得時に利用できる主な税制優遇制度

制度名対象優遇内容
固定資産税の減額認定住宅軽減期間延長(一般住宅より長く、認定住宅は最大延長)
登録免許税の軽減認定住宅税率が最大0.2%ポイント軽減
不動産取得税の軽減認定住宅課税標準から最大100万円控除(認定住宅)


次に、売却時には「居住用財産の3000万円特別控除」が利用できます。これは、自ら居住していた住宅を譲渡するとき、譲渡所得から最大3000万円を控除できる制度で、控除によって税額がゼロになるケースもあります。適用には、居住用住宅であること、所有をやめてから3年後の年末までの譲渡、前年および前々年に控除を受けていないことなどの要件があります。


さらに、所有期間が10年を超える物件では、譲渡所得に対する税率が軽減され、例えば14.21%の軽減税率が適用されることがあります。また、この3000万円控除と軽減税率は併用可能ですが、住宅ローン控除・譲渡損失の繰越控除・買換え特例など他の特例とは併用できませんので注意が必要です。


まとめますと、不動産取得時には認定住宅による取得税・登録免許税・固定資産税の優遇措置、売却時には譲渡所得に対する3000万円特別控除および軽減税率の活用によって、大きな節税効果を期待できます。ただし、各制度には適用期限や適用要件があるため、最新情報の確認と計画的な活用が重要です。


節税方法を選ぶ際のポイント整理と制度同士のバランス


不動産購入に関する節税制度を活用する際は、それぞれの制度の特徴や条件を整理し、重複が認められない組み合わせを避けつつ、全体として節税効果を高めることが大切です。


まず、住宅ローン控除と譲渡税の軽減特例(居住用財産の3,000万円特別控除など)は併用できませんので、住み替えを検討する場合にはどちらの制度を利用するか慎重に判断する必要があります。住宅ローン控除を住宅ローン残高からの控除として利用するのか、それとも売却時の特別控除を使うのか、事前に確認しておきましょう。


次に、各制度には適用条件があります。たとえば住宅ローン控除では、認定長期優良住宅や省エネ住宅など、住宅の性能により控除額や対象住宅ローン残高の上限が異なります。また、適用対象となる時期や居住の有無、所得金額なども条件になりますので、制度ごとに整理して比較してください。


さらに、税制改正による制度の変更や適用期限にも注意が必要です。たとえば、住宅ローン控除の上乗せ措置(認定住宅などに対する借入限度額の引き上げ)は、2025年度も延長されており、サービス付き高齢者向け住宅などへの特例措置も延長されています。一方、土地譲渡益に関する特例には廃止されたものもあるため、計画的な適用が重要です。



以下の表は、代表的な制度を一覧にして整理したものです。

制度 主な適用条件 留意点
住宅ローン控除 認定住宅、省エネ住宅などの性能要件・ローン残高限度あり 所得税額未満は控除しきれない可能性あり
譲渡所得の特別控除(3,000万円) 居住用財産の売却が対象、居住要件あり 住宅ローン控除との併用不可
取得時・固定資産税の軽減制度 省エネ住宅・高齢者向け住宅など対象、工事や性能要件あり 適用期限・対象条件に注意が必要


このように、制度ごとの適用条件や併用可否、適用期限を事前に整理することで、無理なく制度を組み合わせられます。そのうえで、税制変更のリスクにも備え、計画的に制度を使っていくことをおすすめいたします。


まとめ


不動産購入にあたっては、住宅ローン控除や減価償却といった制度の特徴や適用条件を丁寧に整理し、自身の状況に合わせて最適な節税方法を選ぶことが重要です。各種特例や税制優遇制度は住宅の性能や取得時期、所得によって大きく影響するため、最新の制度改正にも常に注意を払いましょう。税制の適用可否や優遇措置の期限を事前に把握し、計画的な準備を重ねることで、無理なく最大限の節税効果を得ることができます。どなたでも分かりやすく知識を身につけ、一歩先を行く不動産購入を実現しましょう。

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