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親からの住宅購入援助で起こるトラブルは?注意点と安全な手続きも解説

不動産取引について

清水 崇志

筆者 清水 崇志

不動産キャリア21年

生涯のトータルサポートを目指します。不動産以外でも、お困りごとはご相談くださいませ。


こんにちは、いえプロ不動産です。


住宅を購入する際、親から資金援助を受けることは多くの方にとって心強いものです。しかし、制度を知らずに受け取ると、思わぬ問題やトラブルにつながることも少なくありません。「親から住宅購入資金を援助してもらったら税金がかかるのでは?」「手続きに不安がある」と感じている方も多いのではないでしょうか。


本記事では、親からの住宅購入資金援助に関する制度や注意点、そして失敗しないためのポイントについて、分かりやすく解説します。安全に、そして確実に手続きを進めたい方はぜひ続きをお読みください。




親からの住宅取得資金の贈与に関する制度と非課税枠の基本


親や祖父母などの直系尊属から住宅購入資金を援助してもらう場合、「住宅取得等資金贈与の非課税特例」を活用できる可能性があります。この制度を利用するには、贈与された資金が新築・取得または増改築の対価に充てられる金銭である必要がありますが、不動産そのものの贈与や住宅ローン返済のための資金援助は対象外です。


制度の非課税限度額は住宅の性能によって異なり、省エネ・耐震性・バリアフリーなどの基準を満たす「省エネ等住宅」であれば非課税枠は最大1,000万円、それ以外の住宅では500万円です。



受贈者(贈与を受ける方)にはいくつかの要件があり、以下の通りです。


項目要件
年齢贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与は20歳以上)
所得合計所得金額が2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
制度の利用歴過去に同じ非課税制度を受けたことがないこと


上記の要件は国税庁の公的情報にも基づいており、信頼できる根拠のある情報です。


さらに、非課税枠の利用期間は2026年12月31日までとされており、この期間中に贈与を受け、翌年の3月15日までに引き渡しを受ける必要があります。


この特例は、贈与税の「暦年課税制度」と併用可能であり、基礎控除110万円との併用により、実質的に最大で1,110万円まで非課税とすることができるケースもあります。


税務署に発覚するリスクと正しい手続きの重要性


親からの現金手渡しによる住宅購入資金の援助は、記録が残らないから安心、と思われるかもしれません。しかし、実際には次のような理由から、税務署に発覚する可能性が非常に高くなります。


まず、贈与者あるいは受贈者の銀行口座から引き出された大きな金額は、税務署による調査対象になります。税務署は口座履歴を確認でき、「いつ」「どこから」「何円」が出金されたかを把握可能です。そのため、現金手渡しでも使途不明金として調査され、贈与の事実が推定されることが少なくありません。


さらに、住宅購入に伴う登記手続きや住宅ローン控除申請などの際に提出する資料と資金の出どころが一致しない場合にも、税務署から疑いを持たれます。不動産登記上の支払者と実際の資金提供者が異なると、調査のきっかけになり得ます。


申告漏れが発覚すると、贈与税のほかに無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。場合によっては重加算税(最大で約40%)が適用されるケースもあり、非常に大きな負担となります。


こうしたリスクを避けるためには、まず「贈与契約書」を作成して贈与の事実を明確に記録することが重要です。同時に、できる限り銀行振込で資金移動の記録を残すことが望ましいです。現金手渡しにならざるを得ない場合でも、受領証や振込証明などを活用して証拠を残し、後の調査に備えることが賢明です。


以下の表に、現金手渡しのリスクと推奨される対応をまとめます。


項目現金手渡しの場合推奨される対応
記録の有無残らないため疑いを招きやすい振込で証拠を残す
調査リスク高い(使途不明金として調査対象)資金出所と用途を明確化
罰則の可能性無申告加算税・延滞税・重加算税の対象適切な申告・書類整備


このように、親からの資金援助を受けた際には、税務署に正しく把握されつつ、適切に手続きを進めることが不可欠です。安心して住宅購入を進めるためにも、贈与契約書の作成や記録の保存、申告手続きの確実な実施を心がけてください。


贈与以外の方法とそのリスク回避のポイント


親からの資金援助に頼らず、別の方法で住宅取得を進めたい場合、主に「親子間融資」と「共有名義での購入」が考えられます。それぞれにメリットはあるものの、注意点も少なくありませんので、よく理解したうえで選択することが大切です。


方法 メリット リスクと注意点
親子間融資 贈与税を回避でき、柔軟な金利設定が可能 借用書の作成が必要。金利不設定や証拠不足で贈与とみなされる可能性あり
共有名義での購入 名義を共有することで、初期の贈与税が回避できる場合も 持分と負担割合の不一致で贈与と判断されるリスク。将来の相続トラブルにもつながりやすい
記録を残す対策 将来の相続時にも配慮でき、透明性が保たれる 金融機関や相続手続きでの整備不足により問題となることも

親子間融資では、正式な借用書を作成し、金利や返済方法を明記することで、後に税務上で贈与とされるリスクを減らせます。ただし、無利息あるいは名目だけの返済で終わると、贈与とみなされる可能性がありますので、きちんと証拠を残すことが重要です。


共有名義での購入は、名義を分担することで明確な資金負担を反映できますが、もし登記上の持分が実際の出資割合と乖離していると、その差額分が贈与と見なされる恐れがあります。そのため、親と子とで資金負担割合と名義持分が一致するよう、登記時に明記しておく必要があります 。


さらに、共有名義の不動産は将来的に相続が発生した際に問題になりやすく、共有者が増えるごとに管理や処分が難しくなります。活用や売却に関しても共有者全員の同意が必要となり、放置・負担の偏り・相続時の所有権が複雑化といったリスクが高まります 。


そのため、共有名義を採用する場合には、資金援助の記録をしっかり残し、将来の相続時に「特別受益」とされないよう透明性を持たせておくことが大切です。また、専門家への相談により最適な対策を検討することもお勧めです。


制度活用と資金援助の安全な進め方


親からの住宅取得資金の贈与を上手に進めるためには、制度の違いや使い分けを正しく理解し、住宅ローン控除などとの併用にも注意することが重要です。また、制度の手続きや時期についても専門家に相談すると安心です。


制度 主な特徴 注意点
住宅取得資金の非課税特例 適用対象住宅に応じ、最高で1,000万円(良質住宅)、または500万円まで非課税 既に住宅ローン返済中の場合は適用できません。
相続時精算課税制度 基礎控除110万円+特別控除2,500万円まで非課税 一度選択すると暦年課税に戻せず、将来の相続財産に加算されます。
住宅ローン控除との併用 贈与を除いた住宅ローン残高に応じて控除可能 贈与額が多いと控除対象額が減少します。


まず、住宅取得資金の非課税特例と相続時精算課税制度は併用可能です。たとえば、贈与額のうち最大1,000万円(良質住宅の場合)までは非課税特例を利用し、残りを相続時精算課税制度で賄うことができます。こうすることで、より大きな額を贈与税なしで受け取ることも可能です。また、非課税特例の部分は将来の相続税の課税対象から除かれますので、相続税対策にもなります。ただし、相続時精算課税を選択した分は、将来の相続時に課税対象となるため留意が必要です。


次に、住宅ローン控除との併用時には、控除対象となるローン残高が減る場合があるため注意が必要です。贈与を住宅取得資金に充てた場合、その分は借入金に充当されたとはみなされず、控除対象から除外されます。たとえば、4,000万円の取得価格のうち2,600万円が贈与の場合、借入金2,000万円のうち、1,400万円分のみが住宅ローン控除の対象となります。


最後に、こうした制度の計画立案や申告方法、不安点の確認には、税理士や不動産の専門家への相談が有効です。特に、申告期限を過ぎると相続時精算課税制度では20%の贈与税がかかるケースもありますので、相談のタイミングを早めに設定し、安心して手続きを進めるようにしてください。


まとめ


親から資金援助を受けて住宅を購入する場合、非課税特例の活用や手続きの正確さが非常に大切です。制度の内容や条件をよく理解し、税務署からの指摘や将来の家族間トラブルを避けるためにも、記録の保持や正規の申告が不可欠です。また、贈与以外の方法にもそれぞれ注意点が存在するため、安易に進めるのではなく、事前に十分な準備と確認を行うことが安心につながります。不安がある場合は、専門家への相談を早めに検討することで、安心して家づくりを進められます。

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